タイ語にも文語と口語があります。つまりは書き言葉と話し言葉、タイ語では「ภาษาเขียน」と「ภาษาพูด」といいますが、分かりやすい例で言えば、日本語にもタイ語にもある言葉ですと、「医師と医者」でしょうか。例えばに歯科医院を受診する事を、「歯医者に行く」と言ったりしますがこれも文語と口語の違いです。
歯医者は口語で、歯科医師は文語です。診察室の前に医師の紹介として「歯医者:芸能 歯命」なんてプレートがかかっていたら、違和感を覚えると思います。ふつう「歯科医」って書くでしょ、、って思う事でしょう。
「芸能 歯命」って名前に気を取られてそこまで気が付かないかも>_<
「歯医者」って書かれると何を意図しているかは分かりますが、やっぱり間違えてるよね、変だよね、って話です。
文語と口語が分かれているケース
では、タイ語の文語と口語のうち、比較しやすい分かりやすいところを見ていきましょう。
まずは先ほど日本語でも上げた医師と医者、タイ語で言うところの「แพทย์とหมอ」でしょうか。
あと「ห้องน้ำとสุขา」も観光地なんかで看板が掲げてあったりするので、日常で出てくる文語と口語でしょう。これらも含めて簡単にまとめると下記のような感じです。もちろんこれで全てではなく、あくまで一例です。
へぇ~
そう。まあ「へぇ~、そうなんだ。。。」って感じでしょう。
そして、ここまでであれば特に悩む事もありません。これらの言葉は綴りも読み方も全然違います。
つまり、はっきりと文語と口語が別物として区別されており、意味はほぼ一緒で意図は通じたとしても先ほどの歯科医の例と同様、時と場合に合わせて使い分ける必要がありますよと言うだけの話です。
口語の発音もできる文語のケース
次に説明するのは文語として綴りは変わらないのに口語の読みもあるというタイプの組み合わせです。これらは日本語には無い言葉の使われ方です。
たとえば「ฉัน」という言葉。この言葉の正しい発音は「chǎn」です。しかし実際は「chán」と声調を変えて読む事が良くあります。日本人向けのタイ語の辞書を見ると「ฉัน」の所には発音は「chǎn」口語では「chán」と読むというような事も書かれています。初学者向けの単語帳には「ฉัน」の発音は「chán」とだけ書かれている物もあります。
例えば、こちらの単語帳は口語の発音のみ書かれています。
初学者に要らぬ混乱を招くのを防ぐという意味で、この様に書いてしまうのはアリだと思います。
しかし、正しい発音はあくまで「chǎn」です。タイ人にこの単語だけを単体で読んもらうとだいたい文語の「chǎn」と読んでくれます。あくまで慣用的に口語では「chán」と発音されているという事でした。
「真剣と書いてマジと読む」に近いかもしれません。
、、、なんか微妙な例えだね。
これだけであれば、「ฉัน」という単語の正式な読み方は「chǎn」ですが、口語では「chán」と読みます。はい、お終い、チャンチャン!となるのですが、実は口語の発音を表した綴りも存在するため説明をややこしいものにしてしまいます、これをまとめると、下記のような表が出来上がります。
つまり「ฉัน」という単語の正式な読み方は「chǎn」ですが、口語では「chán」とも読みます。そして口語の読みを文字であらわす際は「ชั้น」と書く事もありますが、これはスラングのような単語であり正式な単語ではないという事です。
なんで4つ目のหรือには文語も口語もピンクのハイライトがあるの?
ピンクのハイライトはタイスタディの音声教材で使う単語や発音記号を表しています。「หรือ」という単語には、日常会話では「AもしくはB」という文の「もしくは」に当たる、英語で言う「OR」のような使い方があり、そのような使い方の時は、日常会話でも発音は「rɯ̌ɯ」を使います。しかし語尾に付けて「~ですか?」という意味で使う時は「rɯ́」等を使います。
ちなみに表中2つ目の「เขา」という言葉も、山という意味で使う時は「khǎw」という文語の発音が日常会話でも使われます。なので国立公園の「カオヤイ(เขาใหญ่)」も発音は「khǎw yày」となり、口語だからと言って「kháw yày」にはなりません。
色々あって面倒な印象を与えているかと思いますが、このような単語はあまり見かける事はありません。そんな事もあるのねとサラッと聞き流す程度で良いでしょう。すぐに慣れます。
タイ人も悩む使いどころ
実はこれらの単語、タイ人もどちらを使えば良いか悩む場面もあるようです。
例えば下記の Web サイトでは「ฉันとชั้น」について、小説の中でどちらの言葉を使うべきか質問をしています。
下記では「เขาとเค้า」がどう違うのか、いくつかの小説では「เขา」で通しているが、「เค้า」と書いている物もある。そして両方が混じっている物もある。何か違いがあるのか?という質問をしています。
上記サイト内にかかれている回答には、本来は文語の方で書くべきであるという発言が多いです。
この他にも、興味がある方は「ภาษาเขียน ภาษาพูด」とタイ語で調べていただければ分かります。例えば下記のウェブサイトも参考になりました。興味がある方はご覧ください。
タイスタディでの扱い
タイスタディの音声教材の中では、1つの言葉に文語と口語の読み方がある先ほどの「ฉัน」や「เขา」といった単語は口語の読み方で発音しています。
これは日常会話では圧倒的に口語の発音を聞く機会が多いからです。正しいタイ語ではあるとは言えません。しかしタイスタディはタイ語研究サイトではなくタイ語を使えるようになってタイ人とスムーズにコミュニケーションができるようになろうという事を目標にしているサイトなので、その単語に口語の読みがある場合は口語で発音してもらいました。
以上、「口語と文語による声調の違いと本書での取り扱いについて」でした。
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